6.中国国内のあり余る資金が香港市場へ
前項で登場した、金融の自由化に向けた株式市場の制度改革には、別の目的もあります。
中国の高度経済を牽引してきた輸出産業により、貿易黒字は伸びる一方。これにより、中国の外貨準備高は2006年には1兆ドルを突破、日本を抜き世界1位の外貨保有国となりました。かつて日本も戦後の高度経済成長期を経て輸出大国となり、外貨準備高で世界1位となりましたが、この状況は今の中国と非常に似ています。
そして企業は、輸出で稼いだ外貨を、自国の通貨(日本なら円、中国なら人民元)に変えようとしますから、それだけ円や人民元の発行高が増えて、国内にお金余りの現象(過剰流動性)が生まれます。余ったお金が向う先は、株や不動産・・・バブルの始まりですね。
この構図は、かつての日本で見られらものですが、円を人民元に変えれば、今の中国の状況とそっくりです。そして現在の中国は、かつての日本の二の舞になることを避けるべく、過剰流動性が引き起こす、経済の過熱(バブル)のコントロールに必死です。金利引き上げを始めとする経済引締め策を次々と打ち出す一方で、抑制しすぎてしまえば、日本のバブル崩壊のようなハードランディングになってしまいますから、その微妙な舵取りには、かなり頭を悩ませていることでしょう。

こうした状況を解決するために、中国政府は国内の経済引締め政策だけでなく、別のアプローチでも対策を講じようとしています。そもそも、この過剰流動性の原因となっているのは、これまで積みあがった巨額な外貨準備金なわけですから、これをなんとかすればいいわけですよね。
対策として、いちばん効果的なのは、やはり「人民元の切り上げ」だと思います(人民元の切り上げにより、ドル建ての外貨準備金の価値が目減りするから)。
でも、この人民元の切り上げを急激に行ってしまうことは、あまりにも大きな影響が出ることが予想されるだけに、中国政府は、米国からの圧力にも負けず、頑として行おうとはしません。とはいえ、少しずつならば大丈夫ということなのでしょうか。2005年の固定相場制からバスケット制の移行後、決められた変動幅のもとで少しずつ連続的に切りあがるかたちで進められている状態です。
でも、今のペースでは、日々積みあがる巨額な外貨準備金への対策には不十分。為替の安定のためには7000億ドルの外貨が必要とされていますが、現在1兆5千億ドルと言われる外貨準備金では、まだ超過分が相当ありますので、これをなんとかしなくては・・・。

そこで中国政府が考えたのが、「持っている外貨を使って、海外に投資すればいいんじゃん?」ということです。
これなら、巨額の外貨準備金を減らし、国内の過剰流動性の抑制にもつながりますし、海外での運用によって資産が増えてくれれば1石2鳥。しかも、外貨準備金はドル一辺倒になっていますから、世界的なドル離れが進む中では、ドル安へのリスクヘッジにもなります。う〜ん、コレは頭いいぞ!
このため中国政府は、2007年に登録資本2000億ドル、100%国有の政府投資ファンドである中国投資有限公司(CIC)を設立、海外への投資を開始しました。そして、この「海外投資先」には、経済的には完全に中国と切り離された「外国扱い」となっている香港も含まれています。
政府は、この外貨準備金のうち相当額を香港へ投下するのではないかという推測もあり、実際にCICは07年12月の中国中鉄(中国最大の鉄道部系列の総合建設会社)の香港市場のIPOに参加、1億ドルの資金を投資しています。
また、国内にあふれているお金そのものを、個人や機関投資家に海外へ投資させてガス抜きさせようという動きもあります。この狙い上にあるのが、国内機関投資家による海外投資(QDII)の規制緩和、個人投資果による海外投資の解禁(”直通車”と呼ばれます。2007年に実施が発表されるも、その後延期が決定。実施時期は現在も未定。)といった流れです。
中国の場合、「海外投資」の最大のターゲットは「香港」ですから、香港市場へは今後も継続的に中国本土からの資金が流れこんでくる見込みが高いことも、現在の香港株の大きな魅力となっています。(さらに、前項のようなAH格差狙いのテーマも同時に浮上するわけですね)
また現在は、許可を受けた海外機関投資家(QFII)にしか投資ができない本土A株ですが、こちらも少しずつ規制緩和が行われれていくことと思います。いずれは、完全な金融自由化により、今以上に多くの資金が、海外から流入してくることになるかもしれませんね。
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